デンソー、SaaSで本腰 — 新興国発のSolwerサービスを先進国へ
デンソーの⼦会社デンソーインターナショナルインディアが、製造現場またはモビリティー分野で活⽤するデジタルプラットフォーム 「Solwer(ソルバー)」の顧客開拓に本腰を⼊れている。主にインドで開発したSaaS(ソフトウエア‧アズ‧ア‧サービス) で、2023年にインドで⼀部サービスの提供を開始。今後、インドや東南アジアに加え、新興国発の技術を先進国に広げる「リバース イノベーション」として⽇本、北⽶での普及を⽬指す。⽴ち上げを主導したデンソーインターナショナルインディアの新事業戦略担当 副社⻑、渡辺伸也⽒がNNAの単独取材に応じ、Solwerの年間売上⾼について「⾜元はまだまだの規模だが、30年までに数百 億円にしたい」と述べた。【鈴⽊健太】
デンソーインターナショナルインディアがSolwer として展開する5アプリの1つ、「KAIZEN Io T」(同社提供
Solwerは、「物流マネジメント」「カーボンフットプリントマネジメント」「KAIZEN IoT」の製造現場向け3アプリと、 「デジタルインスペクション」「アフマスーパーアプリ」のモビリティー分野向け2アプリの計5アプリで構成。「デジタルインスペク ション」は23年、その他の4アプリは25年にサービス提供をインドで始めた。デンソーのインド⼦会社がSaaSを⼿がけるのは今 回が初めて。
製造系の3アプリは、製造現場の無駄を⾒える化して改善を⽀援したり、貨物の積み込みと荷下ろしの効率や輸送ルートを⼈⼯知能 (AI)などを使って管理したりする。また、そうした各データを使って⼆酸化炭素(CO2)排出量を可視化。将来は削減⽅法の提 案にもつなげる。
モビリティー系の2アプリは、スマートフォンなどで撮影した画像をもとにAIが損傷を検出して⾞を査定したり、⾞の部品‧修理⼿ 配や洗⾞を予約‧管理してユーザーの利便性と業者の収益向上を⽀援したりする。

製造系アプリとモビリティー系アプリはそれぞれ運⽤基盤としてデジタルプラットフォームを1つずつ持つ。「物流マネジメント」で 集めたデータを「カーボンフットプリントマネジメント」に⽣かすなど、同じプラットフォームであればアプリ同⼠が収集データを連 携できる。5アプリの⾔語はいずれも英語だが、⽂字が読めない⼈でも簡単に操作できるユーザー‧インターフェース(UI)に配 慮。⾮英語圏を含むグローバル展開を⾒据えて設計した。
印は優れたリバースイノベ拠点
デンソーのインド⼦会社はアプリごとに顧客と契約し、利⽤料を毎⽉もらうサブスクリプション(定額課⾦)制などで収益を得る。5 アプリの顧客は現在、在インド⽇系企業が中⼼だが、この先は在インドの地場や外資系企業に広げる⽅針だ。
他アプリに先んじて投⼊した「デジタルインスペクション」は今、Solwer総顧客数の6〜7割を占める主⼒サービスだ。タイや シンガポール、⽇本企業との商談もすでに始めた。配⾞サービスを⼿がけるグローバル企業のインド法⼈とも契約済み。配⾞サービス ⼀環で⾞を運転するドライバーが、この「デジタルインスペクション」を使って運転前と運転後に⾞をチェックしたりしている

デンソーは25年8⽉、Solwerが、国際連合⼯業開発機関(UNIDO)の「グローバルサウス諸国への⽇本からの技術移転を 通じた産業協⼒プログラム」に採択されたと発表した。UNIDOを経由した⽇本‧経済産業省の資⾦⽀援(25年7⽉〜27年11⽉の 実証分)を受け、まずはインドでの普及に注⼒する。
さらに27年以降、東南アジアをはじめ、リバースイノベーションとして⽇本、北⽶でもSolwerを広める考えだ。東南アジアはイ ンドと同じ新興国として顧客ニーズがある程度共通すると予想。⽇本と北⽶は⼈件費を圧縮する⽬的で需要があると期待する。
インドは新興国の中でもリバースイノベーション拠点として優れる。ソフトウエア開発⼈材が多い上、多様な⾔語‧宗教があり、顧客 は価格に厳しい。企業はさまざまな課題にぶつかりながら、⾃社の商品‧サービスを磨ける。先進国に⽐べ、社会実装もしやすい。
強み⽣かした新ビジネス
デンソーの25年3⽉期の連結売上⾼は7兆1,617億円。独ボッシュに次ぎ、売上⾼で世界2位の⾃動⾞部品メーカーだ。トヨタ⾃動⾞ 系としても知られる。ただ、⾞寿命の⻑期化や⾞部材のリサイクルなど、デンソーを含む⾃動⾞業界の事業環境は⼤きく変わりつつあ る。
これまで中核だった⾞部品の製造販売と違う分野で、新しいビジネスを何かできないか――。デンソーのインド⼦会社は21年、Sol wer開発に本格着⼿。デンソーの強みを⽣かせる新ビジネスを追求し、製造現場またはモビリティー分野で活⽤する5アプリにたど り着いた。
従来の⾞部品事業は市場投⼊時から100%の品質が求められる。⼀⽅、SaaSはある程度の品質でいったん市場に投⼊。その後、顧 客の反応を⾒て改善を繰り返しながら、より良いサービスに育てることが多い。 開発中は、⽇本本社からインド⼦会社に権限を⼤幅に委譲してもらい、インドのスピード感に合わせて⽅向性を判断。KGI(重要⽬ 標達成指標)もKPI(重要業績評価指標)も既存事業と異なる中、社内の理解を得ながら開発を苦労して進めた。デンソーの名を背 負ってSolwerを展開する以上、レピュテーションリスク(企業の評判を害する恐れ)もある。撤退シナリオは常に⽤意してい た。
デンソーインターナショナルインディアの渡辺⽒はNNAの取材に対し、「サービス開始に順次こぎつけ、なんとかゼロを1にでき た。今後は1を10に、10を100にスケールさせたい」と話した。

NNAの単独取材に応じるデンソーインターナショナル インディアの新事業戦略担当副社⻑、渡辺伸也⽒=2 ⽉、インド北部ハリヤナ州マネサール(NNA撮影)
国‧地域業種 インド 関連タグ ⾞両
インド ⽇本 ASEAN ⽶国 ⾃動⾞ ⼆輪⾞ ⾞部品 電機 精密機器 機械 ⾦融⼀般 保険 IT⼀般 電⼦‧コンピュータ
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